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平野啓一郎(著)「ドーン」★★★★
純文学とエンターテイメントの融合 平野啓一郎の「ドーン」
 ドーン

■ 内 容 ■

 2033年、人類で初めて火星に降り立った宇宙飛行士・佐野明日人(さの あ すと)。火星から帰還した明日人はアメリカ大統領選挙をめぐる巨大な陰謀に巻き込まれ て い く。鍵を握るのは、宇宙船<ドーンDAWN>の中で起きた「ある事件」。明日人の妻・今日子、副大統領候補の娘リリアン・レイン・・・・・・ 
 様々な人 物 た ちの間でうごめくそれぞれの思い。世界的英雄となった明日人を巻き込む人類史上最大の秘密とは?30年後、人類はまだ人を愛することができるのか!?
 『決壊』を経て、平野 啓一郎が描く、最高の純文学かつ究極のエンターテイメント小説。 (講談社HPより)

■ 感想など ■

【 再チャレンジ 】

 実は小生、平野啓一郎『決壊』で途中挫折しています。
 凡人の小生には、濃密に書き込まれた文学的な言葉の羅列が、上手い文章なのか、はたまたくどい表現や過剰な比喩の積み重ねなのか分からないまま、文学を読み切る心の体力が切れてしまい、大作の序盤でリタイア。

 ですから「ドーン」で平野啓一郎に再チャレンジなのであります。

【 これが平野啓一郎 】

 本作から「これが平野啓一郎の文章だ!!」ってことろを引用します。
『・・・・そこでひとつの刹那が、彼を衝撃とともに拉し去って、抱擁しながら跡形もなく引き裂くはずだった。
 自分の生の痛ましい痕跡と引き替えに、完全な沈黙へと消え入りながら、もういい、と一言囁いてくれるはずだった。』
 大衆小説やライトノベルではお目にかからないような文章表現です。

 さらに平野啓一郎らしさに溢れる部分を引用・・・。
『四十億年以上もの時間をかけて、気がつけばこうなっていたという、その完全な偶然任せ!呆れるほど楽天的な結果論的美! あらゆる我執から、清々しいほどに自由な時間への信頼! 目にも見えないほどの分子の結合から積み上げて、その表面を晴れやかに覆い尽くす大気に至るまでの誇大妄想的な運動の連鎖!
 何もかもが、このたった一つの空間の力に引き寄せられている。人と動物との別を問わず、生物も無生物も関係なく、同じ一続きの場所を得て、重力を介して相互に交わり合っている。もし気まぐれに手を離されれば、たちまち、無限の死の世界へと放り出されてしまうような孤独の最中に、特別にそれを意識させられることもなく、あらゆる生命の活動を許し、あらゆる無機物の存在を受け容れながら、ついに一個の自らであり続ける巨大な複製不可能な生命! 地球と呼ばれる完壁な時間! その表層的な器の中で、独創性の限りを尽くして、ありとあらゆる生物が誕生しては、束の間栄えて絶滅してゆく。---人間たち! その極最近になって登場し、異様な繁殖力で「全地の表」を覆い尽くして、その場所を、神が自分たちのために準備したと錯覚しながら、架空の君臨に酔い痴れてきた、愛すべき、滑稽な人間たち! その経営が任されるには、あまりに無力で、あまりに無知で、あまりに卑小な人間たち!』
 登場人物が、宇宙の中の地球と人類を語っているのですが、なんとも凄まじい文学的表現!!
 平野啓一郎は、読者に媚びることなく、言葉の塊をぶつけてくる!!

 これら決して生易しくない文章の連なりを身体が受け付けるかどうかが平野文学を読破できるか否かの分かれ道かな・・・。
 幸い「ドーン」は、人類初の火星着陸を果たした宇宙飛行士を巡るストーリーの面白さがあったので、最後のページまで辿り着くことが出来ました。

【 何を訴えかけている(1) 】

 さて、文学作品でありますから「ドーン」を通じて平野啓一郎が何を訴えかけているのか、”解”を見つけたいなどと思ってしまいました。(国語のテストみたいな・・・)

 まずは、主人公を巡る身近な物語から・・・。

 医師である主人公・佐野明日人は東京大震災で一人息子を亡くし、その後火星探査に参加し、6年間地球を離れる。
 明日人の妻は、亡くなった息子の詳細データから作られ年月とともに成長する息子のホロイメージを家の中に再生し悲しみを埋め合わせている・・・。

 火星探査によって生じた6年の空白や互いの異性問題など、主人公夫婦に降りかかる複雑な出来事の積み重ねによってすれ違ったり、理解し合おうとしたりする”夫婦の心・感情”が「ドーン」の柱ではあると思う。
 だけど、それだけがこの物語のすべてではない気がします。

【 何を訴えかけている(2) 】

 作中、2030年代のアメリカの大統領選挙が描かれているのですが、この時代のアメリカは中東を通り越して東アフリカで民主化のための戦争をやらかしていて、一国主義で主戦派の現職と、国連主義で東アフリカ戦争に懐疑的な対立候補が選挙運動を繰り広げています。
 イラク戦争の延長線とも思える「軍産複合体」「民間戦争会社」「ロボット兵器・ハイテク兵器」などの是非を議論する両候補の言葉を通じて、平野啓一郎はアメリカの振る舞いを諫めているのでしょうか・・・。

 でも、平野啓一郎が単純に反米を訴えているようにも思えない。
 もっと深い意味合いがありそうです。

【 何を訴えかけている(3) 】

 ネット上にアバターを作るように、現実社会で自分の色々な個性・人格を使い分ける「分人」という概念が登場します。
 職場での人格、恋人や家族と過ごすときの人格などを別人格として独立させ、積極的かつ意識的に”多重人格”である生き方・・・「分人主義」

 たしかに複雑な社会を生きていくためには、色々な顔を使い分けていますものね。
 小生自身で考えれば、趣味に没頭するオタクな自分、子どもと接する子煩悩な自分、公の場での完全なる作りものの表情を浮かべてる自分、友人と猥雑な話をしている自分、電車で老人に席を譲る自分、嫌いな上司に憎しみさえ抱く自分・・・考えれば数え切れない自分があります。
 作中の近未来では、これらの自分を独立させて日々を過ごす人が多数派になっています。(小生の稚拙な言葉では表現しきれていないなぁ)

 色々な顔があっても自分は自分だという考え方も含めて、「自分とは何なのか?」を平野啓一郎は語ろうとしている気がしました。

【 何を訴えかけている(4) 】

 イギリスでは監視カメラが至る所に設置されて犯罪捜査などに利用されていると聞きます。
 アメリカでもいわゆる「愛国者法」に基づき盗聴や監視カメラなどでテロ予防が行われています。
 日本でも、道路に設けられたNシステムで通行車両が撮影され、犯罪捜査に用いられています。
 これら国家権力による監視体制の独占に対抗するために、店舗の監視カメラなど民間が設置したカメラをネットワークでつなぎ誰もがアクセスできる「散影」というシステムが作品の重要なアイテムとして登場します。

 国家だけにコソコソと監視させるより、いっそのことすべての監視映像をオープン化することで国家権力を牽制しようと言う考え方。

 国家権力への問題提起と、急速に進歩する情報通信技術の未来についての考察を、平野啓一郎が提示してるのかな・・・。



 以上を総合すると、「ドーン」には、複雑化した社会が、新しい技術の進歩でさらに深く複雑化したとき、人間の生き方がどう変わるかを書き示されているのか・・・・。
 とにかく「分人主義」「散影」という平野啓一郎の造語による概念やツールが印象的で、翻って”今の自分”、”今の社会”を考える材料となる一冊でした。
凡庸な小生には難しい作品だったけど、きっと「これが答えだ」なんてモノもなくていいのでしょう。
 一冊読み切って、何かが心の肥やしになればそれで良いのかも・・・・。

 (小さなことだけど、主人公・佐野明日人が”さのあすと”ではなく、”セイノ・アストー”と英語読みで呼ばれていることも妙に印象的でした。)


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日本文芸一般 | 15:04:49 | トラックバック(0) | コメント(0)
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