2008-12-05 Fri
第53回江戸川乱歩賞受賞作。 沈底魚
■内 容
日本警察に流れた衝撃の情報・・・・中国公安と繋がりを持つ大物政治家『沈底魚』が日本政界に身を潜めている。
アメリカに亡命した中国外交官の発言がこれを裏付け、警察庁公安部に緊張が走る。
『沈底魚』の存在は真実なのか。
日米中を巻き込む公安ミステリー。
■感想など
『江戸川乱歩賞受賞作』で、そこそこ話題にもなった本作だけど、「乱歩賞史上、もっともスリリングな公安ミステリー」という宣伝文句はやや誇張が過ぎるかも・・・。
江戸川乱歩賞と日本ホラー小説大賞のダブル受賞作家で鳴り物入りとなった新人作家・曽根圭介だけど、今野 敏、横山秀夫、麻生 幾、楡 周平、笹本 稜平など、警察小説の名手、国際謀略小説、エスピオナージュの名手は枚挙にいとまがなく、「沈底魚」が抜群に秀でた作品だとは思えなかった。
-◆-
曽根圭介が描く公安は無頼の集団で乱暴な振る舞いばかり・・・。靴をすり減らす勘だよりの捜査は古臭く、頭脳的な捜査が見受けられない。
それはそれで泥臭さが魅力なのかも知れないけど、ハードボイルドでもないし横山秀夫ほどの心の襞まで描き込むって感じでもない。
-◆-
大物政治家『沈底魚』を巡る謀略合戦は日米中3カ国にまたがる大事件なのだけど、スケール感がない。大風呂敷を広げた割に、ちまちました事件になってしまっている。
中国公安との死闘を描く春江一也の『上海クライシス』と比べても明らかに見劣りする。
曽根圭介が描く日本の公安はマヌケだし、中国公安も狡賢さに欠ける。
高揚感を得ることなく読み終えた一冊でした。
スポンサーサイト